【香港情報】香港の2026年施政報告/香港経済・金融市場の2026年9月の概況
香港の2026年施政報告を解説|5カ年計画で香港はどう変わる?

2026年9月16日、香港特別行政区政府は「2026年施政報告」を発表しました。
今回特に注目されるのが、香港で初めて策定された「2026~2030年の5カ年計画」です。今後5年間の経済・産業・都市開発・人材・暮らしなどについて、今後の発展に向けた方向性が示されています。
今回は、施政報告と5カ年計画から、今後の香港を考えるうえで注目したいポイントをご紹介します。
香港初の「5カ年計画」を策定
今回、香港政府は「香港特別行政区経済・社会発展5カ年計画(2026~2030年)」を発表しました。
これは香港初の5カ年計画で、国際金融センターなど「4つの中心と1つのハブ」の強化、北部都会区の開発、人材育成、大湾区との連携、産業・企業の発展、生活環境の改善など、幅広い分野が対象となっています。
計画には105の指標が設定されており、進捗状況を確認しながら必要に応じて調整する仕組みも設けられています。
金融センターとしての香港をさらに強化
日本人にとっても注目したいのが金融分野です。
香港政府は、オフショア人民元ビジネス、資産・ウェルスマネジメント、株式・債券市場、商品取引、グリーンファイナンス、デジタル金融などをさらに発展させる方針です。
2025年には、香港でのオフショア人民元融資が9,350億元に達し、人民元建て債券の発行額も2年連続で1兆元に達しました。また、2025年から2026年前半にかけて、香港で発行されたデジタル債券は世界市場の約半分を占めたとされています。
北部都会区とAI・テクノロジー
今後の香港の都市構造に大きな影響を与えるのが、北部都会区(Northern Metropolis)です。
新田(San Tin)、洪水橋(Hung Shui Kiu)、打鼓嶺(Ta Kwu Ling)に3つの大学都市を整備し、教育・研究・テクノロジー・産業・人材を一体的に発展させる計画です。3つの大学都市のキャンパス部分だけでも約300ヘクタール、周辺を含む計画面積は1,000ヘクタールを超えます。
また、AIやイノベーション・テクノロジーも重要な成長分野です。AI関連産業への支援やインテリジェント・コンピューティング産業の発展を進めるほか、行政や都市管理にAIを活用する「AI City Brain」の構築も進める方針です。

海外企業の誘致と人材育成
企業誘致も重要なテーマです。
金融、先端製造、イノベーション・テクノロジー、研究開発、本社機能などの分野で、一定の条件を満たす企業を対象に、5%または通常税率の半分となる優遇税率を設けるための法案を年内に提出する方針が示されています。
人材面では、研究型大学院の受け入れ枠を約30%増やすほか、香港博士研究生奨学金制度の枠を2029/30年度までに年間550枠に増やすなど、人材・教育分野の強化を進めます。
大湾区との連携と市民生活
香港政府は、国際金融・貿易などの機能を維持・強化しながら、広東・香港・マカオ大湾区との経済・産業・人材などの連携も深める方針です。
また、5カ年計画は経済や産業だけを対象とするものではありません。住宅、医療、高齢者支援、教育、労働者支援、子どもや若者への支援など、市民生活に関わる幅広い分野も含まれています。
5カ年計画で進む香港の変化
2026年の施政報告と5カ年計画からは、金融、先端産業、都市開発、人材、大湾区との連携を一体的に進める香港の方向性が見えてきます。
今後5年間で、金融センターとしての機能をさらに強化するとともに、AIや先端技術などの新産業を育て、北部都会区を新たな教育・研究・産業の拠点として整備していく方針です。
これらの政策が今後どのように具体化され、香港の経済や金融市場、都市、そして市民の生活にどのような変化をもたらすのか、引き続き注目されます。
主な出典:香港特別行政区政府「2026年施政報告」、香港特別行政区政府「香港特別行政区経済・社会発展5カ年計画(2026~2030年)」
香港経済、輸出と金融市場の活況続く — 2026年9月概況

2026年9月時点の香港経済は、輸出の高い伸びが続くとともに、株式市場やIPO市場でも活発な動きがみられています。
9月に発表された最新の経済指標では、7月の輸出量が前年同月比31.6%増となったほか、2026年1~8月の香港株式市場の1日平均売買代金も前年同期を上回っています。また、9月には香港のベースレートが引き上げられるなど、金融市場をめぐる環境にも動きがありました。
9月17日に発表された2026年7月の貿易統計によると、7月の輸出量は前年同月比31.6%増、輸入量は23.6%増となりました。2026年1~7月では、輸出量が前年同期比29.1%増、輸入量が29.3%増となっています。特に7月は、台湾向け輸出量が70.3%増、米国向けが64.2%増、ベトナム向けが56.4%増、中国本土向けが34.7%増と、主要市場への輸出が大きく伸びました。
AI関連電子製品に対する世界的な需要が、香港の貿易を支える要因となっています。一方、世界的な貿易政策や地政学的な情勢など、香港の輸出を取り巻く外部環境には不確実性も残っています。

金融市場では、8月も活発な取引が続きました。香港取引所(HKEX)によると、2026年8月末の香港株式市場の時価総額は47.2兆香港ドルとなりました。2026年1~8月の株式市場の1日平均売買代金は2,825億香港ドルで、前年同期比14%増加しています。ETFの1日平均売買代金も398億香港ドルとなり、前年同期比18%増加しました。
IPO市場でも活況が続いており、2026年1~8月の新規上場企業数は106社となり、前年同期比80%増加しました。IPOによる資金調達額は3,424億香港ドルで、前年同期比153%増となっています。IPOを通じた企業の資金調達が大幅に増加していることも、2026年の香港金融市場における大きな特徴です。
金融環境では、9月17日に香港金融管理局(HKMA)がベースレートを4.00%から4.25%へ0.25ポイント引き上げました。これは、米国のフェデラルファンド金利の誘導目標レンジが25ベーシスポイント引き上げられたことを受け、香港の事前設定された算定方式に基づいて決定されたものです。香港では香港ドルと米ドルの為替レートを一定の範囲内に維持するリンク・エクスチェンジ・レート制度が採用されているため、米国の金利動向は香港の金融環境にも大きく関係します。
また、9月14日に発表された2026年第2四半期の国民総所得(GNI)は、前年同期比7.9%増の9,661億香港ドルとなりました。物価変動を除いた実質ベースでは5.3%増となり、GNIがGDPを上回った主な要因は、投資所得の純流入によるものです。これは、香港経済が海外との投資を通じて強く結びついていることを示しています。

消費市場では、7月の小売売上高が前年同月比4.5%増となり、15か月連続で前年同月を上回りました。2026年1~7月では8.9%増加しており、オンライン小売も前年同期比24.9%増と大きく伸びています。消費の増加が続く一方、オンラインを通じた消費の拡大も目立っています。
雇用環境については、9月17日に発表された6~8月期の季節調整済み失業率が3.8%となり、前期の3.7%から0.1ポイント上昇しました。ただし、就業者数は約365万2,000人となり、前期から約4,400人増加しています。経済全体が拡大する中でも、業種によって雇用環境には違いがみられ、特に飲食サービス業などでは失業率の上昇が目立ちました。
2026年9月時点では、輸出の大幅な増加に加え、株式取引やIPOによる資金調達も活発に推移しています。特にAI関連電子製品への世界的な需要は香港の貿易を支える要因となっており、金融市場でも取引や資金調達の拡大が続いています。
一方で、貿易政策や地政学的リスクなど、外部環境には不確実性も残っています。今後は、こうした輸出や金融市場の動きが、消費や雇用など香港経済の幅広い分野にどのように波及していくのかが注目されます。




